佐賀オフィスで歩み始めた、Nさんの小さな一歩。
外に出ることさえ難しかった日々から人と意見を交わし、自分の思いを伝えられるようになるまでの道のりをご紹介します。
同じように対人不安や生活リズムの乱れに悩む方、ご家族として支え方を模索している方、そして支援に携わる方へ。
Nさんの体験が、次の一歩を考えるきっかけになれば幸いです。

外に出ることさえ難しかったあの頃

Nさんが就労継続支援A型事業所(以下、A型事業所)に通い始めたのは、「安定して仕事ができるようになったら、将来はパソコンを使った一般就労をしたい」という思いからでした。

小中学校では不登校傾向があり、高校も全日制から通信制へ転学。
障害の特性からコミュニケーションに難しさを抱え、漠然とした対人不安で外出が難しく、自宅で過ごす時間が長い時期もありました。

ご家族が福祉系NPO法人へに相談したことをきっかけに、少しずつ社会との接点が生まれ、外出や他者との関わりにわずかな自信がついた頃、佐賀オフィスへの通所が始まりました。
しかし当初は公共交通機関の利用も容易ではなく、通所自体が大きな挑戦でした。
Nさんは家族や主治医の支えを受けながら、一歩を踏み出した状況でした。

通所開始時は、人とうまく話すことができない場合や不安が強まると涙があふれる姿は、当時のNさんの精一杯のSOSのサインでした。

安心できる場所で積み重ねた支援

通所当初は、作業中スタッフが隣でマンツーマンでサポート。
Nさんは質問ができず、困って涙することもありましたが、作業理解は早くスピードも問題ありませんでした。
Photoshopスキルを活かし、オンラインゲーム「MILU」のデザインチームで活躍し、他のご利用者様へのレクチャーも任されるようになりました。
さらに佐賀オフィスのブログ文章作成で、読みやすい文章力も発揮しました。

コミュニケーション面では、定期面談に加え、不調時や欠席翌日にも面談を実施。
複数スタッフが同じ距離感で関わる体制を整え、Nさんが安心して言葉にできる環境を作りました。

生活面では、まず生活リズムの安定を目標に、日誌や健康管理シートで心身の状態を確認。
服薬による眠気や業務量の得意・苦手をバランスよく調整しながらサポートしました。
トラブル時には面談で状況を整理し、距離感の取り方や「NO」の伝え方を具体的に練習しました。

こうした支援は、Nさんが学校生活でうまくいかなかったと感じている過去を、別の形で向き直すような時間でもありました。

人との関わりの中で見つけた成長のきっかけ

転機は、サンクスラボでの人との関わりの中で訪れました。
小中学校では十分に体験できなかった、意見の違いやすれ違いをここで本格的に経験することになったのです。

入所当初は、言葉の受け取り方の違いから誤解が生まれ、不安が高まると感情があふれ、関係が落ち着くまで時間がかかることもありました。
そのたびスタッフと面談し、出来事を振り返りながら、どのように言葉を伝えるとよかったかを確認。
複数スタッフの関わりで、具体的な対処方法を少しずつ積み重ねました。

さらに大きな変化は、自分の心の声に気づき、安心できる場所で少しずつ言葉にして伝えられるようになったこと。
長く胸に抱えてきた不安や思いを共有できるようになったその歩みは、支援者である私たちにとっても印象深いものでした。

涙から言葉へ――変わっていった日常

入所当初、障害や精神的不安の影響でコミュニケーションはほとんど取れず、不安が高まると涙があふれる状態でした。

しかし、サンクスラボで面談や振り返り、言葉の練習を重ねる中で、少しずつ自分の思いを表現できるようになりました。
意見の違いを言葉で伝え、ときには相手とぶつかりながら関係を調整する姿も見られるようになり、人と向き合う力が育ったことが伺えます。

涙しか出なかった日々から、自分の気持ちを言葉で伝えられる日常へ。
変化は一気には訪れず、日々の声かけや面談、失敗と振り返りの積み重ねで少しずつ形づくられていきました。

もし今、外に出ることや人との関わりに不安を感じている方や、相談先に迷っているご家族がいれば、佐賀オフィスに相談してください。
安心して気持ちを言葉にできる場所があることを、Nさんの歩みが静かに伝えています。